低炭素住宅とは、二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるための対策として制定された「エコまち法」に基づいて、「低炭素建築物新築等計画の認定制度」で規定された住宅で、市街化区域等内に建築される断熱性能や省エネ効果など低炭素化を行った住宅を指します。
この記事では低炭素住宅の認定を取ることでどのようなメリット、デメリットがあるのか解説します。
認定低炭素住宅のメリット
1.快適な住宅環境で過ごすことができる
低炭素住宅として認定されるためには、優れた断熱性や気密性といった性能が求められます。
断熱性や気密性の高い住宅は外気温の影響を受けにくく、室内の冷暖房効率も良いため、「冬は暖かく」「夏は涼しい」といった快適な室内環境が保たれます。
2.光熱費を削減できる
上記で述べた通り、低炭素住宅は優れた断熱性や気密性があり、冷暖房費を抑えることができます。そのほか、低炭素住宅の認定には一定の省エネ性能基準があり、給湯機器やトイレなどの設備を省エネ仕様にする必要があるため、家全体のランニングコストが低くなる傾向にあります。
また2022年10月より認定基準が改定され、太陽光発電など再生可能エネルギー利用設備の導入が必須となったため、自家でエネルギーを創りだすことで光熱費の節約となります。
3.税金の優遇
■住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、一定の要件を満たした場合に「毎年年末の住宅ローン残高の0.7%」を所得税および住民税から控除できる制度です。(最大13年間)
2022年の場合、一般住宅では住宅ローン控除の対象となるのは3000万円までですが、低炭素住宅は5,000万円までが住宅ローン控除の対象となります。住宅ローン減税については、入居のタイミングにより対象金額が異なりますので注意が必要です。
住宅の性能 | 借入限度額 (2022~2023入居時) | 借入限度額 (2024~2025入居時) |
---|---|---|
低炭素住宅 | 5000万円 | 4500万円 |
長期優良住宅 | 5000万円 | 4500万円 |
Zeh水準省エネ住宅 | 4500万円 | 4000万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4000万円 | 3000万円 |
その他の住宅 | 3000万円 | 0円 |
■投資型減税
投資型減税は住宅ローンを組まずに現金で購入する場合や、ローン期間が10年未満で住宅ローン減税が受けられない場合でも利用できる減税措置です。投資型減税は長期優良住宅や低炭素住宅に対応したもので、最大控除額は65万円です。(住宅ローン減税と投資型減税の併用はできません。)
■登録免許税
登録免許税とは、登記の手続きを行う際にかかる税金で、登記の種類によって税率が決められています。住宅の登録免許税については、もともと以下のような軽減措置が反映されていますが、認定低炭素住宅ではさらに税率が低くなります。この軽減措置の適用期限は2024年3月31日までとなっています。
登記の種類 | 本則税率 | 軽減措置 一般住宅 | 軽減措置 認定低炭素住宅 |
---|---|---|---|
所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% | 0.1% |
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | 0.1% |
4.住宅ローン金利の優遇
低炭素住宅の認定を受けると、35年間固定金利の「フラット35S(金利Aプラン)」を利用できます。フラット35Sとは、高性能住宅を取得する場合に、借入金利が一定期間割引になる制度で低炭素住宅も対象となります。
フラット35S(金利Aプラン)を利用した場合、住宅ローン当初10年間の金利が「通常のフラット35」と比べ、0.25%引き下げられます。
5.容積率が緩和される
容積率とは、その土地に対する建物の延床面積の割合です。
低炭素住宅では、低炭素化に必要な設備(蓄電池や太陽光発電設備など)の分は容積率の計算に算入しないという緩和措置が設けられています。緩和措置の限度は延床面積の1/20までとなります。延べ床面積の緩和があることにより、その土地内に広い家を建てることが可能となります。
6.住宅に関する補助金の対象となる場合がある
低炭素住宅に認定されると、「こどもみらい住宅支援事業」や「地域型住宅グリーン化事業」の補助金対象になる場合があります。
こどもみらい住宅支援事業とは、子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する住宅の新築や、世帯問わず省エネ改修等を行う場合に補助金が交付される事業です。低炭素住宅の場合、2022年10月より認定基準が改定されたことにより、補助額が100万円となります。
地域型住宅グリーン化事業とは、低炭素住宅や長期優良住宅などの住宅を特定の地域の工務店で建築した際に、補助金の支給を受けることができる事業です。低炭素住宅の場合、1戸あたり110万円を上限とし、地域材を使用した場合は20万円、三世代同居仕様にした場合は30万円加算されます。
認定低炭素住宅のデメリット
1. 建設前の申請が必要でお金と時間がかかる
低炭素住宅は認定基準にあわせて住宅を設計し、外皮性能や一次エネルギー消費量の細かな計算が必要となります。申請はそういった計算を証明する書類を併せて提出します。
また、低炭素住宅の申請、認定は着工前に行わなければならないため、住宅の完成までの時間が長くなります。補助金の申請等も併せて行う場合はスケジュールに余裕を持って準備する必要があります。
申請費用については、評価機関の審査を得ているかどうかや、所管行政庁(地域)によって異なる場合があります。また、ハウスメーカーや工務店に申請手続きを依頼する場合は別途手数料が発生することがあります。申請にかかる費用の金額については手数料を含め、10万円以内に収まることが多いです。
2. 建設費、設備費の導入コストがかかる
低炭素住宅の認定を取るには、高い外皮性能と省エネ性が必要になります。
外皮性能を高めるには、通常の住宅に比べ、断熱材の厚みを増やしたり、グレードの高い断熱材や窓を使用するといった対応を行います。省エネ性を高めるには、省エネ設備を設置する必要があります。冷暖房器具や給湯設備など、ライフスタイルに合ったものを選びましょう。
2022年10月より認定基準が改定され、低炭素住宅でも再生可能エネルギー設備を取り入れる必要があります。太陽光発電などの設置費用がかかります。
3. 建築できる地域が限られている
低炭素住宅の認定申請ができるのは「市街化区域内」に建てた場合のみとなります。
市街化区域とは、その地域の都市計画法に基づき、「すでに市街地を形成している区域とおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」のことです。住宅用の土地は市街化区域に設定されていることがほとんどですが、土地を購入する際には都市計画法をあらかじめ確認しておくことをお勧めします。
まとめ
低炭素住宅のメリット
- 快適な住宅環境で過ごすことができる
- 光熱費を削減できる
- 税金の優遇
- 住宅ローン金利の優遇
- 容積率が緩和される
- 住宅に関する補助金の対象となる場合がある
低炭素住宅のデメリット
- 建設前の申請が必要でお金と時間がかかる
- 建設費、設備費の導入コストがかかる
- 建築できる地域が限られている
以上、低炭素住宅のメリットとデメリットでした。
デメリットとして、「建設時のイニシャルコストがかかる」という点がありますが、こういったコストをかけることでメリットである快適性、光熱費の削減に結びつくため、コストをかける価値は大いに感じられるでしょう。
申請費用やイニシャルコストについては、長期優良住宅やZeh住宅に比べると安価に抑えられる傾向にあります。補助金の対象となることも多い低炭素住宅。認定のメリット、デメリットや家づくりの予算を踏まえて比較し検討しましょう。